安全確保措置とは、学校設置者等および認定事業者が、教員等や教育保育等従事者による児童対象性暴力等を防止し、万が一発生した場合には児童等を適切に保護するために講ずべき一連の措置のことです。この措置は、児童等の権利を著しく侵害し、心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与える性暴力を防ぎ、児童等の心身の健全な発達に寄与することを目的としています。
主な内容は、ガイドラインに基づき以下の4つの柱で構成されています。
1. 児童対象性暴力等の未然防止策(日頃から講ずべき措置)
性暴力が起きにくい環境を作るため、日常的に以下の取組を行います。
• 服務規律等の整備・周知
児童対象性暴力等や「不適切な行為」の範囲を明確化し、これらを行った者には厳正に対処する方針を周知します。
• 施設・事業所環境の整備
物理的な死角をなくすための環境改善や、防犯カメラの活用、複数の目が行き届く体制の構築などを行います。
• 従事者に対する研修
全ての対象業務従事者に、こどもの権利や性暴力の発生要因、不適切な行為の範囲など、法定の8項目を含む研修を受講させます。
• 児童等や保護者への教育・啓発
児童等が自らを守るための知識(プライベートゾーン等)を教え、保護者には制度や相談窓口について周知します。
2. 早期把握・相談のための措置
被害を早期に発見し、児童等が声を上げやすくするための仕組みです。
• 日常観察・定期的な面談等
児童等の心身の変化を見守るとともに、発達段階や特性に応じたアンケートや面談を定期的に実施します。
• 相談体制の整備
施設内に相談窓口や相談員を置くだけでなく、外部の公的相談窓口についても児童や保護者に周知します。
3. 疑いが生じた場合等の措置(調査・保護・支援)
性暴力の疑いを把握した際に、組織として迅速に対応するための手順です。
• 事実関係の調査
警察等の関係機関と連携しながら、児童等の人権や特性に配慮し、公正かつ中立な調査を行います。
• 児童等の保護および支援
被害児童等と加害が疑われる者との接触回避、専門的な支援機関への情報提供、真摯な相談対応などを行い、児童が日常を取り戻せるよう支えます。
4. 犯罪事実確認と防止措置
措置の基盤として、以下の仕組みが組み込まれています。
• 犯罪事実確認(日本版DBS)
児童等に接する業務に従事する者の特定性犯罪事実(性犯罪歴)の有無を確認します。
• 防止措置
確認の結果、前科がある場合や、調査で性暴力の事実が認められた場合には、その者を対象業務に従事させない(配置転換等)といった適切な措置を講じます。
これらの措置は、警察、児童相談所、自治体などの関係機関と適切に連携しながら進めることが求められています。
おそれがあると認めるときの対応について
こども性暴力防止法(日本版DBS)のガイドラインに基づき、対象業務従事者による児童対象性暴力等の「おそれがあると認めるとき」の対応について、その判断プロセスと具体的な措置をまとめます。
1. 「おそれがあると認める」4つのケース
事業者が防止措置を講ずべき「おそれ」がある状況は、以下の4つに分類されます 。
1. 特定性犯罪事実該当者であった場合
犯歴確認の結果、対象期間内に特定の性犯罪歴があることが判明したとき 。
2. 被害の申出があった場合
児童等本人や保護者から、特定の従事者による被害の訴えがあったとき(事実確認前の暫定対応)。
3. 調査の結果、性暴力等が合理的に判断される場合
調査を経て、現に児童対象性暴力等が行われたと認められるとき 。
4. 調査の結果、不適切な行為が合理的に判断される場合
性暴力には至らないが、それにつながり得る「不適切な行為」が認められるとき 。
2. 「おそれ」の内容に応じた具体的な防止措置
「おそれ」の内容により、以下の措置を講じる必要があります 。
• 対象業務に従事させない(原則):
◦ 上記1、3、または4のうち「重大な不適切な行為」や「指導を繰り返しても改善しない不適切な行為」がある場合、原則としてこどもと接する業務から外す必要があります
。
◦ 具体的には、内定取消し(新規採用時)や、こどもと接しない業務への配置転換(現職者)などを行います。
• 一時的な接触回避
◦ 上記2のように被害の申出があった段階では、事実確認ができるまでの暫定措置として、自宅待機命令や別業務への従事により、被害が疑われる児童等との接触を直ちに遮断します。
3. 事案発生時の初動・調査対応
疑いが生じた場合、事業者は迅速かつ組織的に対応しなければなりません。
• 初期対応
児童等の安全確保を最優先とし、警察や所管行政庁へ速やかに通報・相談します。二次被害や記憶の汚染を防ぐため、事業者による独自の聴き取りは最低限にとどめ、専門機関と連携します
。
• 事実調査
児童等の人権・特性に配慮しつつ、客観的な証拠(防犯カメラ、SNS記録等)を保全し、公正・中立な立場で事実の有無を確認します 。
• 保護・支援
被害を受けたと認められる児童等に対し、加害が疑われる者との接触回避に加え、支援機関の情報提供や誠実な相談対応を行います。
4. 労働法制等を踏まえた留意点
防止措置として人事措置(配置転換や解雇等)を行う際は、労働契約法等に照らして「権利濫用」にならないよう注意が必要です 。
• 配置転換
職種限定合意がある場合は本人の同意が必要ですが、法に基づく防止措置としての業務変更は一般に業務上の必要性が認められやすいと考えられます。
• 懲戒・解雇
あらかじめ就業規則に「特定性犯罪事実の秘匿(経歴詐称)」や「児童対象性暴力等の実施」を懲戒事由として規定し、周知しておくことが不可欠です 。
• 不適切な行為への段階的対応
軽微な不適切な行為に対しては、いきなり重い処分を行うのではなく、まずは指導や研修受講命令を行い、経過を観察するなどの段階的な対応が推奨されます
。
対象事業者は、これらの対応を適切に行うため、「児童対象性暴力等対処規程」を作成し、具体的な手順を定めておくことが認定基準の一部となっています。
「こども性暴力防止法に関するQ&A」より
【5-1】 教員や保育士等については、教員性暴力等防止法や児童福祉法、またこれらに基づく指針に基づき、法で定める早期把握、相談、調査、保護・支援、研修に関する取組をこれまでも実施してきましたが、法の施行後、新たに追加的な取組が求められますか。
(答) 教員性暴力等防止法及び同法に基づく指針との整合性に関しては、学校については、教員性暴力等防止法で定められている早期把握、相談、調査、保護・支援、研修の措置を講じていれば、当該措置と重複する内容については、基本的にはこども性暴力防止法やガイドライン等で示す内容を満たすため、重複して同様の措置を講じる必要はありません。
同様に、保育所等についても、保育士による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針で求められている措置が講じられている場合には、当該措置と重複する内容については、同様の重複する措置を講じる必要はありません。
【5-2】 法第8条等に基づく研修のうち、教員性暴力等防止法に基づく研修等で重複する内容を既に受けている場合には、省略することができるとされていますが、省略ができない内容はどのような内容ですか。
(答) 従事者が、既に教員性暴力等防止法に基づく研修を受けている場合には、こども性暴力防止法の研修のうち、少なくとも
・ 法の概要
・ 犯罪事実確認において対象業務従事者に求められる内容
・ 防止措置の基礎的事項
・ 厳格な情報管理の必要性
については、こども家庭庁作成の標準動画等を用いて追加で実施する必要があります。
こども家庭庁作成の「こども性暴力防止法に関する研修の手引き」も併せてご参照ください。
【5-3 】こどもから、性暴力について打ち明けられた際、録音すべきでしょうか。録音できる業務用端末を持ち合わせていない場合はどのようにすればよいでしょうか。
(答) 聴き取りの内容は、正確に記録を残すことが重要ですので、可能であれば、本人の同意のもと、本人に負担感がないか十分に確認した上で、録音することも検討してください。
また、録音が難しい場合には、こどもや聴き取りを行った人が何と言ったか、使った表現や言葉をそのまま記録に残してください。
なお、録音可能な業務用端末を用意できないなどのやむを得ない事情があれば、私用端末で録音することも考えられます。私用端末で録音した場合には、録音内容に機微な内容が含まれる可能性がありますので、組織内に報告後、録音データを業務用端末に移した上で、管理職等の確認の下で速やかにそのデータを削除するなどの対応を行ってください。
【5-4】 外部相談窓口の周知や児童対象性暴力等が疑われる場合の調査、被害児童等の保護・支援を行うに当たり、どのように連携先の関係機関や専門家を探せばよいでしょうか。
答) ガイドラインにおいては、警察や弁護士、所管行政庁等の行政機関等、連携が考えられる機関について記載するとともに、公的機関等が設置する主な相談窓口の一覧や、心身のケアや法的対応に関する支援機関等の一覧を掲載していますので、参考にご活用ください。
【5-5】 警察とは、どのようなタイミングで連携すればよいでしょうか。
(答) 犯罪であることが明らかである、又はその疑いがある場合には、直ちに警察に通報又は相談してください。
児童等への初期の聴き取りをやむを得ず行わなければならない場合にも、二次被害、記憶の汚染の防止等の観点から、児童等への聴き取りは最低限にとどめてください。
また、警察に通報するか判断に迷う場合にも、そうした状況にあることを含めて、今後の対応について警察に相談することを第一に検討してください。
なお、警察への通報又は相談を行うに当たっては、保護者が関与している疑いがあるといった特段の事情がある場合を除き、児童等や保護者に事前に伝達を行ってください。
【5-6 】従事者に研修を受講させる義務を履行する際、事業者は、自ら研修を実施しなければなりませんか。
(答) 法においては、対象事業者に対し、従事者に一定の要件を満たす研修を受講させる義務を課していますが、研修の実施主体は問うていません。こども家庭庁において、作成・公表している研修教材も参考に、どのような研修とするかについて検討してください。
【5-7】 従事者の研修受講について、ある事業者で従事した際に研修を受講し、その後別の事業者で従事する場合、改めて研修を受講する必要がありますか。
(答) 従事者に研修を受講させる義務は事業者ごとに課されることから、別の事業者で従事する場合にも、その事業者の管理の下、改めて研修を受講する必要があります。
なお、こども家庭庁において、従事者が理解すべき最低限の内容を網羅した要点研修(約 17 分)も作成・公表しています。
【5-8 】従事者全員が受けるべき研修のほかに、管理者等が受けるべき研修はありますか。
答) 法令上、管理者向け研修は必須ではありませんが、より制度の詳細をご理解いただくため、こども家庭庁が作成・公表している解説動画等を用いて、管理者の方向けに研修を実施することが可能です。
行政書士と社会保険労務士のダブルライセンス保持者によるサポート。新法に準拠した「児童対象性暴力等対処規定」の策定から、複雑な「就業規則・労働条件通知書」の改定まで、日本版DBS導入支援をワンストップで完結。20名規模の施設に必要な規程作成を、法律と現場実務の両面から完璧にバックアップします。
