認定等の基準-認定事業者等に求められる役割と義務
民間教育保育等事業者が認定を受けるには、学校設置者等と同等の措置を実施する体制が確保されている必要があります。
言い換えれば、それだけ厳密な対応が義務規定として加わってくるということです。
こども家庭庁は、民間教育保育等事業者等による認定等の申請の内容が、次の①及び②のいずれも満たすと認めるときに、認定等を行うとされています。
① 民間教育保育等事業及び教育保育等従事者の業務に該当すること。
② 次のアからカまでに掲げる基準に適合すること
ア :対象業務に従事させようとする者の犯罪事実確認を適切に実施するための体制を備えていること
イ :対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置を実施していること
早期把握の実施(法第 20 条第1項第2号、規則第8条)
○ 対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置とは、次の(ア)から(ウ)までに掲げるものをいう。
(規則第8条。具体的な早期把握の実施方法は「Ⅴ.3.(1)児童等との面談その他の児童対象性暴力等のおそれを早期に把握するための措置」参照)。
(ア) 児童等に対する日常観察
(イ) 発達段階や特性、事業の特性に応じた児童等に対する定期的な面談・アンケート
(ウ) 適切な報告・対応ルールの策定・周知等
児童等との面談その他の児童対象性暴力等のおそれを早期に把握するための措置
1. 児童等に対する日常観察
従事者が児童等の些細な変化や被害の兆候を見逃さないよう、日々の見守りを強化します。
• 変化の察知: 児童等の心身や行動に普段と異なる様子がないか、日常的に観察します 。
• 複数の目: 担任や特定の担当者だけでなく、可能な限り複数の従事者の視点で観察し、情報を共有します 。
• 積極的な対話: 違和感を覚えた場合は、児童等に積極的に声を掛け、対話を試みます。
• 環境づくり: 従事者間、および従事者と児童等の間で、些細な懸念を共有しやすい心理的に安全な雰囲気を整えます 。
2. 定期的な面談・アンケートの実施
児童等が被害や悩みを打ち明ける機会を能動的に設けます。これは加害の抑制効果も期待されます 。
• 発達段階への配慮: 児童等の年齢や特性(未就学児、障害児など)に応じた手法(イラスト、点字、デジタルツールの活用など)を検討します 。
• 心理的障壁の除去
◦ 無記名アンケートや自宅に持ち帰って提出できる形式など、周囲の目を気にせず回答できる工夫をします 。
◦ 既存のアンケートに数問追加するなど、児童等の負担を軽減します。
• 回答者の保護: 被害を訴えることで不利益を被らないことを徹底し、安心感を与えます。
3. 適切な報告・対応ルールの策定と周知
疑いを把握した際に、迅速かつ組織的に対応できる体制をあらかじめ整えます 。
• 報告ルールの明確化: 報告先(管理職、担当チーム等)、報告方法、報告内容を定め、従事者・児童等・保護者に周知します 。
• 組織的対応(チーム対応): 一人で抱え込まず、専門性を備えた複数の者によるチームで対応します 。
• 秘密保持と不利益取扱いの禁止: 相談者や報告内容の情報を厳格に管理し、報告を理由とした不利益な取扱いを禁止します。
• 外部機関との連携準備: 警察、所管行政庁、弁護士、支援機関など、早期に相談・連携できる外部先をリストアップしておきます 。
これらの措置に加え、児童等が容易に相談できるよう、事業者内部の相談窓口の設置や外部相談窓口の周知を併せて行うことが、法によって義務付けられています。
ウ :対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置を実施していること。
相談の実施(法第 20 条第1項第3号、規則第9条)
○ 対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置とは、次の(ア)及び(イ)に掲げるものをいう(規則第9条。具体的な相談の実施方法は「Ⅴ.3.(2)児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするための措置」参照)。
(ア) 事業者内における相談員の選任又は相談窓口の設置・周知
(イ) 児童対象性暴力等に係る外部相談窓口の周知
児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするための措置
児童対象性暴力等は、児童等から被害を訴えることが難しいものがあるため、複数の相談ルートを設定し、児童等が児童対象性暴力等の被害や、それにつながり得る「不適切な行為」を訴えやすい仕組みを整えることが重要です(詳細は横断指針 p.35~38 参照)。
○ このため、対象事業者においては、児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするため、法第5条第2項等に基づき、次の①及び②に掲げる措置を実施しなければなりません。
① 事業者内における相談員の選任又は相談窓口の設置・周知
② 児童対象性暴力等に係る外部相談窓口の周知
主な措置は「内部相談体制の整備」と「外部相談窓口の周知」の2本柱で構成されます。
1. 事業者内部における相談体制の整備
児童等が自分に合った相談先を選べるよう、以下の工夫を行うことが求められています 。
• 複数の選択肢の提供: 性別に配慮して複数の相談員を配置したり、管理部門など現場とは別の部門に窓口を設けたりして、第三者性を確保します。
• 多様な相談手段: 対面だけでなく、手紙、メール、SNS、チャットなど、児童等が使いやすい手段を用意します。また、匿名での相談が可能であることも明示します。
• 相談後のプロセスの明示: 相談した内容がどのように取り扱われるか(情報の共有範囲など)をあらかじめ示し、「秘密は守られること」「相談したことで不利益な扱いを受けないこと」伝えて安心感を与えます。
2. 外部相談窓口の周知
事業者内の窓口には相談しにくい場合に備え、公的な外部相談窓口の一覧を作成し、児童等や保護者に周知しなければなりません 。
主な外部相談窓口の例
• 24時間子供SOSダイヤル: 0120-0-78310(文部科学省)
• 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター: #8891(内閣府)
• チャット相談「Curetime」: 性暴力の悩みを専門相談員にチャットで相談可能(内閣府)
• 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783
• こどもの人権110番: 0120-007-110(法務省)
3. 相談を受ける際の留意点
相談を受ける従事者は、児童等の心理的障壁を下げるために以下の姿勢で臨むことが重要です。
• 受容的・共感的な対応: 話をしっかりと受け止め、児童等の気持ちに寄り添います 。
• 二次被害の防止: 児童等を責めたり、否定したり、言いたくないことを無理に聞き出したりしないよう細心の注意を払います 。
• 適切な環境: 児童等の意向を踏まえ、一対一がよいか複数名がよいかなどを判断します。面談室などの密室で一対一になる場合は、視認性の確保や記録(同意がある場合)を検討します
。
これらの措置を講じる際は、児童等の発達段階や特性(障害の有無など)に応じた表現や方法を用いるなど、児童等の視点に立った工夫が不可欠です
エ: 次の(ア)から(ウ)までに掲げる措置を定めた規程(以下「児童対象性暴力等対処規程」という。)を作成しており、かつ、その内容が内閣府令で定める基準に適合するものであること。
(ア) 犯罪事実確認の結果、早期把握措置により把握した状況、児童等からの相談の内容その他の事情を踏まえて対象業務従事者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認める場合において、児童対象性暴力等を防止するためにとるべき措置
(イ) 対象業務従事者による児童対象性暴力等が行われた疑いがあると認める場合において、その事実の有無及び内容を確認するための調査の実施
(ウ) 対象業務従事者による児童対象性暴力等を受けた児童等があると認める場合において、当該児童等を保護し、及び支援するためにとるべき措置
オ :児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修として内閣府令で定めるものを対象業務従事者に受講させていること。
研修の実施(法第 20 条第1項第5号、規則第 19 条第3項)
○ 児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関
する理解を深めるための研修の内容は、次の(ア)から(ク)までに掲げる項目を含み、かつ、
座学と演習を組み合わせて行うものとする(規則第 19 条第3項。具体的な研修の実施方法は
「Ⅴ.2.(3)対象業務従事者に対する研修」参照)。
(ア) 従事者による児童対象性暴力等の防止に関する基礎的事項(児童対象性暴力等が生じる要因及びこどもの権利に関する事項を含む。)
(イ) 児童対象性暴力等及び児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為の範囲
(ウ) 児童対象性暴力等及び児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為の疑いの早期発見
(エ) 相談、報告等を踏まえた対応
(オ) 被害児童等の保護・支援
(カ) 犯罪事実確認において従事者に求められる対応
(キ) 防止措置に係る基礎的事項
(ク) 厳格な情報管理の必要性
対象業務従事者に対する研修
1. 研修の目的と対象
• 目的: 児童対象性暴力等の防止に対する関心を高め、取り組むべき事項に関する理解を深めることで、未然防止・早期発見・適切な事案対応につなげることを目的としています。
• 対象者: 学校設置者等の「教員等」や認定事業者の「教育保育等従事者」など、全ての対象業務従事者が受講対象です 。
2. 研修の必須項目(8事項)
研修は、以下の8つの事項をすべて含み、「座学」と「演習」を組み合わせる必要があります 。
1. 防止に関する基礎的事項: 性暴力が生じる要因(「認知の偏り」やグルーミング等)やこどもの権利についての理解 。
2. 暴力および「不適切な行為」の範囲: 性的な言動や盗撮、各事業者が定める「不適切な行為」の具体例 。
3. 疑いの早期把握: 日常観察や面談・アンケート実施時の留意点。
4. 相談・報告後の対応: 被害相談を受けた際の心構え(二次被害防止)や、組織内の報告・対応ルール 。
5. 被害児童等の保護・支援: 児童や保護者への真摯な対応、寄り添い方 。
6. 犯罪事実確認の手続: 従事者本人に求められる対応(戸籍書類の提出等)。
7. 防止措置の基礎: 配置転換などの具体的な措置内容 。
8. 厳格な情報管理: 犯歴情報などの機微な情報の取り扱い 。
3. 「演習」に求められる内容
受講者が具体的場面での適切な対応をイメージできるよう、以下の内容を含むシミュレーション等を行います 。
• 「不適切な行為」の具体的理解: 現場で判断が難しい身体接触などについて議論し、認識を共有する。
• 対応のシミュレーション: こどもや保護者から相談を受けた際に取るべき行動を実践的に考える 。
4. 実施時期と方法
• 受講時期: 原則として、児童等に接する業務に従事する前に受講させる必要があります。認定事業者の場合は、認定申請時までに現職者に受講させておくことが要件となります 。
• 実施方法: 以下のいずれかの方法で行います。
◦ 標準研修: こども家庭庁が作成した標準的な研修動画を利用。
◦ 要点研修: 短期間従事者向けに作成された要点動画を利用。
◦ 独自研修: 業界団体や事業者が独自に作成した、必須事項を満たす研修。
• 定期的な受講
意識の定着やルールの更新に合わせ、定期的(年1回など)に受講させることが望ましいとされています。
5. その他の留意事項
• 他法令との関係
教員性暴力等防止法などに基づく既存の研修で重複する内容がある場合は、その部分を省略することが可能です。
• 労働時間
事業者が受講を義務付けるものであるため、研修時間は労働時間に含まれる点に留意が必要です 。
カ: 犯罪事実確認記録等を適正に管理するために必要な措置を講じていること(法第 20 条第1項第6号及び第 27 条第1項、規則第 12 条第1項。本節「(2)カ
情報管理措置の実施」参照)