犯罪事実確認が期限内にできなかった者への対応



 犯罪事実確認(日本版DBS)を期限内に完了できなかった従事者への対応について、ガイドラインに基づき、事業者が取るべき具体的な措置と法的留意点をまとめます。

 1. 基本的な考え方


対象業務従事者について、犯罪事実確認ができないまま法定の期限を経過した後に、当該従事者を対象業務(こどもに接する業務)に従事させ続けることは、法律上の「犯罪事実確認義務違反」となります。
事業者は、違反状態を回避するため、速やかに以下のいずれかの対応をとらなければなりません。

• 申請従事者に対し、速やかに戸籍書類等の提出手続を行うよう督促する。
• 確認が完了するまでの間、当該従事者を対象業務(こどもに接する業務)に従事させない措置をとる 。

 2. 労働法制等 を踏まえた具体的な対応


従事者が戸籍等の提出に応じず、期限内の確認が困難な場合には、以下の雇用管理上の措置を検討する必要があります。
• 配置転換(業務内容の変更)
 犯罪事実確認義務の違反状態を回避するため、まずは人事権の行使として、「こどもと接しない業務」への配置転換を検討することが考えられます 。
• 業務命令としての指導
 戸籍等の提出は業務上の必要性に基づくものであるため、まずは口頭で、状況により書面等の記録に残る形で、速やかに手続を行うよう業務命令として指導します 。
• 懲戒処分の検討
 指導(業務命令)を受けたにもかかわらず、正当な理由なく犯罪事実確認に必要な手続に対応しない場合は、就業規則違反や業務命令違反として懲戒処分の対象になり得ます
**特に、こどもに接する施設において、犯罪事実確認が児童対象性暴力を防止するための重要な法的義務であることに鑑みれば、これに応じないことは懲戒処分の合理性・相当性の判断において重大な要素となり得ます 。

 3. 未然防止のための「事前伝達」


トラブルを避けるため、事業者は法の施行や認定を受ける前に、従事者に対して以下の事項をあらかじめ書面等で伝達(事前伝達)しておくことが不可欠です。
• 当該従事者が犯罪事実確認の対象に含まれていること 。
• 一定の期限までに戸籍書類等の提出が必要であること 。
• 期限までに確認が完了しない場合、対象業務に従事させることができないこと 。
• 手続に応じない場合は、就業規則違反や業務命令違反として懲戒処分の対象になり得ること 。

 4. 義務違反時のリスク(監督措置)


事業者が犯罪事実確認義務を怠り、未確認の従事者を業務に就かせ続けた場合、以下の監督措置の対象となります。
• 学校設置者等の場合: 事業者名や違反の内容(対象業務従事者数など)が、こども家庭庁のウェブサイトで公表されます 。
• 認定事業者の場合: 犯罪事実確認義務違反は認定の取消事由に該当し、認定が取り消される可能性があります 。
行政命令
 是正命令(情報管理措置に関するものなど)や適合命令(認定基準への適合に関するもの)が下される可能性があり、これに従わない場合はさらに厳しい処分の対象となります。


 こども性暴力防止法における適合命令および是正命令とは、事業者が法律上の義務や認定基準に違反した場合に、こども家庭庁が改善を求めるために発する行政命令のことです 。
それぞれの定義と内容は以下の通りです。

1. 適合命令(てきごうめいれい)
認定事業者が、法第20条第1項各号に掲げられる認定基準のいずれかに適合しなくなったと認められる場合に発せられます 。
• 内容: こども家庭庁は、期限を定めて、基準に適合するために必要な措置をとるべきことを命じることができます 。

2. 是正命令(ぜせいめいれい)
犯罪事実確認実施者等(学校等)認定事業者等が、犯罪事実確認記録等の適正な管理(情報管理措置)に関する規定に違反した場合に発せられます 。
• 発動条件: 情報の漏えい等が生じた場合に限って発せられます 。
• 内容: 違反した具体的な措置の内容、是正期日、および対応完了の報告義務などが示されます。

3. 命令に従わない場合の影響
これらの命令に違反した場合には、制度の運用上、非常に厳しい措置がとられます。
• 認定の取消し: 認定事業者が適合命令または是正命令に違反したときは、認定が取り消されます。
• 犯罪事実確認書の交付留保: 命令を受けた事業者が、必要な措置を講じたと認められるまでの間は、こども家庭庁は犯罪事実確認書の交付を行いません 。
• 公表: 犯罪事実確認実施者等が是正命令を受けた場合、その内容が公表されることがあります 。

4. 対象となる事業者
• 主な対象: 民間の学校設置者や施設等運営者、および認定を受けた民間教育保育等事業者です 。
• 対象外: 国、地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人、地方独立行政法人などは、法律に基づき適正に義務を履行することが期待されているため、法第15条から第18条に定めるこれらの監督措置(是正命令等)の対象からは除外されています 。

「法定事業者」の場合(学校、保育所、児童福祉施設等)
「法定事業者」は、法律によって犯歴確認が「義務」付けられている事業者です。
• 公表措置: 犯歴確認義務に違反した場合、事業者名や違反内容がこども家庭庁のウェブサイトで公表されます。
• 認可の取消し(廃業のリスク): 法定事業者がこの法律(こども性暴力防止法)やこれに基づく命令に違反した場合、所轄庁(都道府県や市町村等)は、それぞれの業界法に基づき「改善命令」や「認可の取消し」、「事業の停止」を命じることができます。
◦ 児童福祉施設や保育所: 児童福祉法に基づき、認可を取り消される場合があります。
◦ 認定こども園: 認定こども園法に基づき、認定の取消しや施設閉鎖、認可の取消しを受ける場合があります。
◦ 学校: 学校教育法に基づき、設置者として必要な措置を講じる義務があり、是正が求められます。
このように、法定事業者の場合は、性暴力防止法違反を理由として本来の事業の運営基盤である「認可」そのものが取り消される可能性があるため、その場合は事業を継続できなくなり(廃業)、施設は閉鎖されることになります。


 なお、急な欠員等の「やむを得ない事情」がある場合に限り、従事開始から原則3か月(最大6か月)までの猶予が認められる「いとま特例」がありますが、この期間中も「特定性犯罪事実該当者(犯歴あり)」とみなして原則一対一にさせない等の安全確保措置を講じなければなりません 。