こども性暴力防止法(日本版DBS)の運用において、対象業務従事者(候補者を含む)に特定性犯罪事実があることが判明した場合、トラブルを防ぎ、児童の安全と個人のプライバシーを両立させるために、「事前の伝達」と「本人への事前通知制度」を活用して自主的な退職や内定辞退を促す仕組みが整えられています。
ガイドラインに基づき、その具体的なプロセスと留意点を解説します。
1. 採用段階や施行前からの「事前伝達」
将来的な紛争を未然に防ぐため、事業者はあらかじめ従事者や求職者に対し、以下の事項を早期に知らせておくこと(事前伝達)が不可欠です。
• 対象業務の明示
その職種が犯罪事実確認(犯歴確認)の対象であることを伝えます。
• 不利益措置の可能性
特定性犯罪事実が確認された場合、法律に基づき対象業務に従事させることができないことをあらかじめ伝えます。
• 就業規則等の根拠
犯歴の手続への協力拒否や、犯歴の秘匿が懲戒処分(内定取消しや解雇等)の対象になり得ることを周知します 。
これらにより、犯歴がある者が自ら応募を控えたり、手続が始まる前に辞退したりすることを促す効果が期待されます 。
2. 「本人への事前通知」による辞退の機会
犯歴確認の手続では、特定性犯罪事実が認められた場合、事業者に結果が届く前にまず本人に対してシステム上で通知が行われます(事前通知)。
• 2週間の猶予
本人は通知を受けてから2週間の「訂正請求期間」が与えられます 。
• 手続の中止と辞退
この期間内に本人が内定辞退や自主退職を申し出れば、事業者は交付申請を取り下げることができます。
• プライバシーの保護
申請が取り下げられた場合、事業者に対して「犯歴あり」という確認書が交付されることはありません 。これにより、本人は具体的な犯歴の内容を事業者に知られることなく、自ら職を退くことが可能になります。
3. 配置転換が困難な場合の対応
既に就業している従事者(現職者)に犯歴が判明した場合、事業者は「こどもと接しない業務」への配置転換を検討しなければなりませんが、小規模な事業所などで配置転換先がない場合もあります
。
• 意向の丁寧な確認
配置転換が難しい場合には、自主的な退職の意向を含め、本人の意向を丁寧に確認するプロセスが推奨されます 。
• 解雇の検討
配置転換等の選択肢を尽くしてもなお、法に基づく防止措置(こどもと接させないこと)を履行できない場合には、最終的に普通解雇を検討することになりますが、その際も事前の周知や本人の意向確認が、社会的相当性を判断する上で重要な要素となります
。
以上、「早期に知らせ、自主的に退職してもらう」ためには、制度開始前や採用時の「事前伝達」「本人への事前通知」のタイミングで内定辞退や退職を選択できることを本人が理解している状態を作ることが重要です。
「ガイドライン P205」
労働法制等を踏まえた留意点
○ 犯罪事実確認義務の違反状態を回避するため、まずは人事権の行使としての配置転換を検討することが考えられる。
○ なお、犯罪事実確認への対応拒否を抑止する観点から、懲戒処分を検討することも考えられる。
※ 懲戒事由として、「企業秩序を乱した場合」、「会社の規則・命令に反した場合」等、一般的な企業秩序違反が定められている場合に、法の対象となる施設・事業において犯罪事実確認等の対象業務に従事している者が、指導(業務命令)を受けたにもかかわらず犯罪事実確認に必要な手続に対応しない場合には、当該事由に該当するものと考えられる(法における犯罪事実確認が、児童対象性暴力等を防止するための重要な手立てと位置付けられており、事業者は犯罪事実確認の結果を踏まえて防止措置の要否を検討することとなっていることや、度重なる指導を受けたにもかかわらず対応しないことは、懲戒処分の合理性・相当性の判断に当たって重大な考慮要素となり得ると考えられる。)。
