対象業務従事者に対する研修について


 

 こども性暴力防止法(日本版DBS)において研修が必要とされる主な理由は、児童対象性暴力等を未然に防止し、万が一の疑いが生じた際にも迅速かつ適切に対応できる体制を構築するためです。

具体的な必要性は、以下の4つの観点から説明されています。

 1. 加害の抑制と「認知の偏り」の是正


 加害者の中には、「子供も喜んでいる」「少し触るくらいは大したことではない」といった、自分勝手な思い込み(認知の偏り)に陥っている者がいます。研修を通じて、性暴力の発生要因やこどもの権利(一人の人間として尊重される権利)を正しく理解させることで、こうした偏った認識を正し、加害を未然に抑制する効果が期待されています。

 2. 被害の早期発見


 児童等は、発達段階や特性、加害者との関係性から、自ら被害を訴えることが難しいケースが多々あります。そのため、従事者が研修によって児童等の心身や行動に現れる些細な変化やサインを察知するスキル(日常観察の留意点)を身に付けることは、潜伏する被害を早期に把握するために不可欠です。

 3. 二次被害の防止と適切な組織対応


 疑いが生じた際、不適切な聴き取りを行うと、児童等にさらなる精神的苦痛を与える(二次被害)だけでなく、記憶が変容してしまう「記憶の汚染」を引き起こすリスクがあります。研修により適切な報告ルートや対応フローを事前に学んでおくことで、組織として児童等の保護・支援を最優先にした正しい初動対応が可能になります。

 4. 現場における共通認識の形成


 性暴力に至る前段階の行為である「不適切な行為」(私的なSNS交換、不必要な密室化、過度な身体接触など)の範囲は、事業の特性や児童等の年齢によって異なります。研修(特に演習)を通じて、自施設における具体的なルールを全従事者で共有し、議論できる環境を整えることが、性暴力が発生しにくい職場づくりにつながります。
なお、この研修を受講させることは、学校設置者等や認定事業者にとっての法的義務(安全確保措置)として位置付けられています

<具体的な研修の内容について>

 こども性暴力防止法(日本版DBS)において、対象業務従事者(事務職員が「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件を満たし、対象となった場合を含む)に対して実施すべき研修の内容は、以下の8つの法定項目を含むものと定められています。

 1. 研修に含まなければならない8項目

従事者がこどもの権利を理解し、性暴力の未然防止や早期発見につなげるため、以下の内容を網羅する必要があります。

1. 防止に関する基礎的事項: 性暴力が生じる要因やこどもの権利(一人の人間として尊重される権利等)の理解。
2. 対象行為および「不適切な行為」の範囲: 法律が禁じる性暴力だけでなく、それにつながり得る不適切な行為(私的なSNS交換、不必要な密室化など)の範囲。
3. 疑いの早期把握のための措置: 日常観察や面談・アンケートを通じて、変化や兆候を早く見つけるための留意点。
4. 相談・報告への対応フロー: 被害の相談を受けた際の心構えや、組織内での迅速な報告・対応手順。
5. 被害児童等の保護および支援: 被害を受けたこどもや保護者への真摯な対応、支援機関との連携。
6. 犯罪事実確認(DBS)の手続: 犯歴確認の全体像や、従事者自身に求められる対応(戸籍書類の提出等)。
7. 防止措置に関する基礎知識: 犯歴が判明した際や疑いが生じた際に行われる配置転換等の考え方。
8. 厳格な情報管理の必要性: 性犯罪歴という極めて機微な情報の取扱いにおける注意点。

 2. 研修の形式(座学と演習)


 単に知識を得るだけでなく、実効性を高めるために「座学」と「演習」を組み合わせることが義務付けられています。
• 演習の内容: 特に「自施設における不適切な行為の範囲」の理解と、「相談を受けた際に取るべき行動のシミュレーション」の2点を必ず含める必要があります。

 3. 受講のタイミング


• 原則: 従事者がこどもに接する業務に従事する前に完了させる必要があります。
• 現職者: 学校設置者等の現職者の場合は施行前に、認定事業者の現職者の場合は認定申請時までに受講していることが必要です。

 4. 事務職員が対象となる場合の注意点


 事務職員であっても、例えば、「保護者との面談中に別室で児童の面倒を見る業務」などが想定され、3要件を満たすと判断された場合は、上記の法定研修を全て受講させる義務が生じます。
 事業者は、こども家庭庁が提供する「標準動画」等を利用するか、独自の教材を用いて、これらの内容を適切に実施し、受講記録を保存しなければなりません。