新加算賃金改善の実施にかかる基本的な考え方


法定福利費について

新加算等の算定額に相当する介護職員その他の職員の賃金の改善を実施しなければならない。
その際、当該賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担増加分を含むことができる。

法定福利費等の範囲について
・ 賃金改善額には次の額を含むものとする。
- 法定福利費(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等)における、新加算等による賃金 改善分に応じて増加した事業主負担分
- 法人事業税における新加算等による賃金上昇分に応じた外形標準課税の付加価値額増加分
・ また、法定福利費等の計算に当たっては、合理的な方法に基づく概算によることができる。
・ なお、任意加入とされている制度に係る増加分(例えば、退職手当共済制度等における掛金等)は含まないものとする。

キャリアパス要件Ⅳにおける賃金改善後の賃金見込額の年額440万円については、法定福利費(社会保険料等の
事業主負担分)は含めずに判断されます。

賃金改善実施の対象

賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定したうえで行うものとする。
特定した項目を含め賃金水準を低下させてはならない
安定的な処遇改善が重要であることから、基本給による賃金改善が望ましい
介護事業サービス事業者等は、独自の賃金改善を含む過去の賃金改善の実績にかかわらず、新たに増加した新加算等の算定額に相当する介護職員その他の職員の賃金改善を新規に実施しなければならない。
その際に新規に実施する賃金改善はベースアップ(賃金表の改訂による基本給又は決まって毎月支払われる手当の額を変更し、賃金水準を一律に引き上げることをいう。)により行うことを基本とする。


「決まって毎月支払われる手当」とは

「決まって毎月支払われる手当」とは、労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当を指す。
・ また、決まって毎月支払われるのであれば、月ごとに額が変動するような手当も含む。
 手当の名称は、「処遇改善手当」等に限る必要はなく、職能手当、資格手当、役職手当、地域手当等の名称であっても差し支えない。
・ ただし、以下の諸手当は、新加算等の算定、賃金改善の対象となる「賃金」には含めて差し支えないが、「決まって毎月支
 払われる手当」には含まれない。
- 月ごとに支払われるか否かが変動するような手当
- 労働と直接的な関係が薄く、当該労働者の個人的事情により支給される手当(通勤手当、扶養手当等)
 時給や日給を引き上げることも「決まって毎月支払われる手当」と同等と取り扱ってよい。
「決まって毎月支払われる手当」が増えると時間外手当、夜勤手当、さらに社会保険料も増えてきます。

新加算の導入に伴い、新たに手当て項目を設定したり、配分方法を変更した場合には、就業規則、賃金規定の
変更が必要となります。

 

 猶予措置について
ベースアップのみにより当該賃金改善を行うことができない場合(例えば、令和6年度介護報酬改定を踏まえ賃金体系等を整備途上である場合)には、必要に応じて、その他の手当、一時金等を組み合わせて実施しても差し支えない。
なお、令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金を取得し、令和6年5月分以前の賃金からベースアップ又は決まって毎月支払われる手当の引上げを行っている場合には、当該賃金改善を令和6年6月以降に実施すべき新規の賃金改善の一部に含めても差し支えない。


賃金改善の対象となる職員の範囲について

介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員(介護福祉士資格保有者、勤続年数10年以上の職員)に重点的に配分することとするが、事業所判断で他の職員へ配分も含め柔軟な配分を認める。
一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと。 また、新加算等を算定する介護サービス事業者等は、当該事業所における賃金改善を行う方法等について職員に周知するとともに、介護職員等から新加算等に係る賃金改善に関する照会があった場合は、当該職員についての賃金改善の内容について、書面を用いるなど分かりやすく回答すること。
処遇改善計画書に、職員の賃金を記載するにあたり、原則、加算の算定対象サービス事業所における賃金については、常勤換算方法により計算することとしており、同一法人において介護サービスと障害福祉サービスを実施しており、兼務している職員がいる場合においても、介護サービス事業所における賃金について、常勤換算方法による計算をし、按分し計算することを想定している。
・ 一方で、計算が困難な場合等においては実際にその職員が収入として得ている額で判断し差し支えない。
法人本部の職員については、新加算等の算定対象となるサービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、賃金改善の対象に含めることができる。
・ 新加算等を算定していない介護サービス事業所等(加算の対象外サービスの事業所等を含む。)及び介護保険以外のサービスの事業所等の職員は、新加算等を原資とする賃金改善の対象に含めることはできない。

令和7年度への繰り越しについて

令和6年度に令和5年度と比較して増加した加算額の一部を令和7年度に繰り越した上で令和7年度分の賃金改善に充てることを認めることとし、令和6年度分の加算の算定額の全額を令和6年度分の賃金改善に充てることは求めない。
その際、令和7年度の賃金改善の原資として繰り越す額(以下「繰越額」という。)の上限は、令和6年度に、仮に令和5年度末(令和6年3月)時点で算定していた旧3加算を継続して算定する場合に見込まれる加算額と、令和6年度の新加算等の加算額(処遇改善計画書においては加算の見込額をいう。)を比較して増加した額とする。


 

賃金水準の引き下げ等労働条件の不利益変更になる場合

処遇改善計画書の内容及びキャリアパス要件Ⅰ~Ⅲを満たすことの書類については全ての介護職員に周知することが必要であるが、万が一就業規則の不利益変更に当たるような場合にあっては、合理的な理由に基づき、適切に労使の合意を得る必要がある。
・ サービス利用者数の大幅な減少などによる経営の悪化等により、事業の継続が著しく困難であると認められるなどの理由があっても、賃金水準を引き下げる場合には、合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要がある。
・ また、賞与等において、経常利益等の業績に連動して支払額が変動する部分が業績に応じて変動することを妨げるものではないが、新加算等に係る賃金改善は、こうした変動と明確に区分されている必要がある。
新加算を用いて賃金改善を行うために一部の賃金項目を引き上げた場合であっても、事業の継続を図るために、賃金全体として、賃金の高さの水準が引き下げられた場合については、特別事情届出書を提出する必要がある。ただし、賃金全体の水準が引き下げられていなければ、個々の賃金項目の水準が低下した場合であっても、特別事情届出書を提出する必要はない。
新加算が全額介護職員の手に渡り事業所全体として賃金水準の引き下げがない場合、特別事情届出書の提出義務はないものの、引き下げられた職員に対して合意を得ている必要があります。