児童の身体の一部に触れる行為(身体接触)については、業務上の必要性がある場合も考えられますが、「児童対象性暴力等」や「不適切な行為」に該当しないよう、以下の点に注意する必要があります。
1. 正当な業務の範囲内であること
教育活動における実技指導、特別支援教育での介助、乳幼児の着替えや排泄・おむつ交換の支援など、業務上必要な身体接触については必要な範囲・態様にとどまる限り、児童対象性暴力等の対象とはなりません。
2. 児童等の発達段階や特性に応じた配慮
• 発達段階による違い
未就学児と中高生では、必要とされる身体接触の範囲が異なります。ただし、小学校低学年であっても、信頼関係 を築く過程で身体接触が生じることはあり得ます。
• 特定の分野
スポーツ、水泳、バレエ、ダンス等の指導では、児童等及び保護者の理解を得た範囲で身体接触を伴う指導があり得ます。
3. 「不適切な行為」を避けるための具体的な注意点
以下の行為は、性暴力の前段階となる「不適切な行為」と判断されるリスクがあります。
• 不必要な接触
必要以上に長時間抱きしめる、一般的ではない抱き方をする。
• 不適切な形態
業務上必要ないのに膝に乗せる、おんぶする(※未就学児への業務上の対応を除く)、添い寝をする、マッサージをする。
• 介助時の誤解防止
おむつ交換時に衣服の上から陰部を触ったり、おむつの中に手を入れて確認したりするなど、誤解を受けるような仕方で交換しない。
4. 現場での運用・コミュニケーション上の工夫
トラブルを防ぎ、児童の安全を守るために、日々の業務で以下の対応を講じることが推奨されています。
• 共通認識の形成
介助や指導で接触が必要な場合は、あらかじめ事業者内で定めたルールを児童や保護者に説明し、合意を得ておくことが重要です。
• 事前の声掛け
年齢の高い児童等に対しては、触れる際にその都度「ここ触るよ」と伝えるようにします。
• 代替案の提示
児童側から接触を求めてきた場合(膝に乗るなど)は、「隣に座ろうね」と言って横に座らせ、手を繋ぐなどして安心感 を与えるといった工夫をします。
• 公開性の確保
膝に乗せる場合でも、他の職員から見える方向を向くなど、密室・閉鎖環境を避けるようにします。
• 特別な支援が必要な場合
児童が特別なスキンシップを必要としていると思われる場合は、事前に保護者に相談します。
事業者は、何が「不適切な行為」にあたるかをあらかじめ文書で明確化し、従事者だけでなく児童等や保護者にも周知しておく必要があります。
*個別契約等への盛り込み
スポーツ指導等において身体接触が想定される場合、あらかじめ個別契約等の書面で身体接触の有無や範囲について合意しておくことが有効です。
4.研修と教育・啓発
・従事者向け研修
「不適切な行為」の具体例を学ぶ演習(ロールプレイ等)を実施し、現場での判断基準を「自分ごと」として理解させる。
・児童向け教育
「プライベートゾーン」や自分と他人の「境界線(バウンダリー)」について教え、嫌な時は「嫌」と言ってよいこと
(こどもの権利)をしっかりと伝える。
・保護者向け啓発
事業者のルールを周知するとともに、うわさを立てたり広めたりしないよう協力を呼び掛ける。
これらの対策を組み合わせ、事業者・従事者・児童・保護者が相互に気を配る環境を構築することが、トラブル防止には不可欠です。
防犯カメラ設置時のプライバシー配慮の具体策について
防犯カメラの設置・運用にあたっては、児童等の安全確保と個人のプライバシー保護のバランスを図ることが重要です。
1. 運用のルール化と合意形成
▷関係者間での議論
設置に際しては、個人のプライバシー、児童等への心理的影響、現場の萎縮(教育内容への影響)、目的外利用の禁止といった観点に配慮し、関係者間で丁寧な議論を行った上で運用ルールについて合意しておく必要があります。
▷保護者への説明
ルール作成時に保護者の意見を聞いたり、定期的に周知したりすることが望ましいとされています。なお、保護者一人ひとりから文書で合意を得ることまでは求められていませんが、安全対策の充実について丁寧に説明し、理解を得ていく一般的なプロセスが想定されています。
2. 設置場所と撮影方法の工夫
▷死角の重点的なカバー
他の職員の目が行き届きにくい場所や、面談室など、児童等と一対一にならざるを得ない場所に設置することが有効です。
▷プライバシー性の高い空間への配慮
居室、トイレ、更衣室、浴室などの閉鎖的空間については、室内の撮影を避け、入口にカメラを設置して入退室のみを記録することで、プライバシーを保護しつつ事後検証を可能にする工夫が挙げられます。
3. 面談室等の録画・録音における特定配慮
▷意向確認と同意
面談室等での録画・録音は、児童等や保護者の意向を丁寧に把握し、同意が得られた場合にのみ行うこととされています。
▷専門的判断の尊重
相談に対応するカウンセラー等の判断も尊重する必要があります。
▷代替案の検討
録画等を行わない場合でも、トラブル防止のため、その場で行われた会話の内容を最後に双方で確認するなどの対応が求められます。
4. データの厳格な管理
▷目的外利用の禁止
映像は業務上必要な範囲(児童対象性暴力等の防止や疑いが生じた際の検証など)に限って利用し、不必要な複写や加工を行わないようにします。
▷アクセス権限の限定
責任者や管理職など、情報の閲覧・操作ができる者を必要最小限に限定し、誰がいつデータに触れたか記録を残すことが重要です。
▷私用端末の禁止
録画や録音に従事者の私用端末を使用してはなりません。
5. 技術的・物理的セキュリティ
▷最新状態の維持
システムのOSやアプリケーションは常に最新バージョンを維持し、メーカーのサポートが切れたものは利用しないようにします。
▷多層的な防御
ウイルス対策ソフトの導入や、インターネットプロバイダのセキュリティサービス活用など、複数の対策を組み合わせてセキュリティ水準を確保します。
以上、これらの措置を講じることで、児童等の安全を守るための客観的な証拠を確保しつつ、不適切な情報の露出や悪用から児童等や従事者のプライバシーを守ることが図られています。
防犯カメラの映像を保存する期間について
ガイドラインでは具体的な数値(「〇日間」など)は示されていませんが、以下の目安と指針が示されています。
可能な限り長期間の保存が望ましい
児童対象性暴力等は、発覚するまでに一定の期間を要することが多いため、証拠保全の観点からは、管理に必要な負担も踏まえた上で、可能な限り長期間保存することが望ましいとされています。
運用ルールの策定
プライバシー保護や現場の萎縮を防ぐための工夫として、「何もなければ映像は見ない、あるいは一定期間の後に消去する」といったルールをあらかじめ関係者間で議論し、合意しておくことが重要です。
目的外利用の制限
保存された映像は、児童対象性暴力等の防止や疑いが生じた際の検証など、業務上必要な範囲に限って利用することとし、不必要な複写や加工を行わないよう管理する必要があります。
このように、一律の保存期間を定めるのではなく、「万が一の事案発生時の検証可能性」と「プライバシー保護や管理負担」のバランスを考慮して、事業者ごとに適切な期間を決定することが求められています。
(令和8年2月1日)

